作品紹介xxxHOLiC
アニメ制作現場とはちゃぶ台のごとくナリ。
ひっくり返されるのは必ずゴチャゴチャしている時であり、
かつそれは恒常的に繰り返される運命にある———
如月。
オープニングの制作が修羅場のキナ臭さを漂わせ始めた、こぬか雨の或日。
「黄瀬さん(注1)まだいるはずだから」
との情報を得て、作監チェック行きのカットを抱き馳せ参じるも———
机はもぬけの殻。
「アニメは30分の差でその生死が決まる、こともある」
という制作部長の金言が脳裏にチラつく…ん?
ふと見ると、巧いのかどうなのかよくわからない筆文字のメモ。
『明日、金曜日(17日)は休みです キセ』
…わかっていただけるでしょうか。
休みます、ではなく、休み「です」。
無論、金曜日(17日)はド平日。ぼくもあなたも、日本の統治の及ぶ全範囲余す処なく明日は平日。
でも、『休みです』
嗚呼、カレンダーを超え、制作状況の悪化を超え、
水島カントクの「黄瀬さん明日は見てくれますかねぇ」の祈りをも超えた、天与の休日。
『休みです』
頑固一徹のソバ屋か、と。
いいんです。とりあえず手元にあったカットはチェックして頂けたわけだし。
次の開店時には、居並ぶカットの行列をバッタバッタと薙ぎ倒し、
また風の如く去ってゆかれるのでしょう。
世に比類なき作監修正の数々と
巧いのかどうなのかよくわからない『Check済 キセ』の筆文字を残して。
- (注1) 黄瀬和哉(キャラクターデザイン)
- 映画「イノセンス」作画監督、TVシリーズ「お伽草子」総作画監督で参加し、押井守監督から絶大な信頼を得るスタッフの一人。「劇場版 ×××HOLiC 真夏ノ夜ノ夢」ではキャラクターデザイン・作画監督を努めた。