作品紹介イノセンス

2003年7月1日(火)

他作品のため、都内某所で打ち合わせ。

その後、中華料理など食べながら歓談。

かつて「Avalon」の撮影現場で、痛風で倒れた経験のあるカントクには、ちと毒なメニューじゃないのか?

あーぁ……喜んでフカヒレなんかパクついちゃってるけど、いいのかなぁ。

せめて「イノセンス」が終わるまでは倒れないでくださいよ。

2003年7月2日(水)

第1ラウンド

IMAGICAにて、先日作業が完了した分のラッシュ試写。

試写があるたびに五反田まで出かけるのは、結構つらいものがあるのだが、この長距離移動をカントクが嫌がらないのは、帰りがけに餃子のうまい店に寄るのを楽しみにしているから。

……とか思っていたら、今日は閉まっていた。

みっともないから「ガ~ン!」とか口に出して言わない!

未練がましく入り口のシャッターに取り付いて、中をのぞかない!!

食い物以外にモチベーションというものがないのかね、マッタク。

「なんのためにここまで来たんだ……」って……餃子か? ギョーザのためなのか!?

第2ラウンド

市ヶ谷にある一口坂スタジオにて、オープニングのデモ曲の収録。

行きがけにカントクと「深夜におよぶ収録はつらいっすねー」などと話していたが、すてきなお姉様方のパワフルな歌声に圧倒されっぱなしで、寝てる暇なんぞありはしなかった。

これでデモだとすると、本番はいったいどんなスゴイことに……?

26:00ごろ終了。グッタリと帰宅。

2003年7月3日(木)

第1ラウンド

スタジオジブリにて昨日のラッシュ試写。

遠く五反田までだと交通費もかかるし、出不精なスタッフは行きたがらないので、より大勢のスタッフに見てもらうためには、近場のスタジオジブリ試写室の存在は本当にありがたい。

近場に食い物屋が少ないので、カントクはうれしくないらしいけどね。

見終わってから打ち合わせをしていると、宮崎氏がのぞきにきた。

カントクが来てるのに顔を出さないから、様子を見にきたらしい。

会えばすぐに侃々諤々始まるくせに、会えないとなんとなく寂しいのかな?

ふたりの間の愛憎が垣間見えたような、そんな気が……気のせいか?

第2ラウンド

今日もオープニングデモ曲の収録。

スタジオには、どこからどうやって入れたのか、超巨大な鼓(つづみ)が。

川井憲次氏の特異な才能は、仕上がりのすばらしさだけでなく、素材の奇抜さ、底なしのアイデアと実験精神にもある。

付き合いの長いカントクですら、目を丸くするわ、イスから転げ落ちるわと、退屈の暇なしである。

予定よりは若干早く、昨日と同時刻に終了。

2003年7月4日(金)

最近よく携帯電話を持っていないことを責められるが、今週のように外出の機会が多くなると、さらに風当たりがきつくなってくる。

主義主張があって持たないわけではないが、今のところはそれほど不自由を感じないので、買う気にはならない。

「お前はプロデューサーなんだから、ケータイぐらい持ってろ」

「自分だって持ってないくせに。捕まらなくて、みんな迷惑してますよ」

「俺はカントクだからいいの!」

……ずるいや。

2003年7月7日(月)

カントクは六本木にて別件の打ち合わせ。

原稿を書く暇がないとボヤきつつ……。

2003年7月8日(火)

CGIの空撮シーンのための追加取材で、六本木ヒルズ屋上より夜景の撮影。

あいにくの雨模様ではあったが、霧雨に煙るトウキョーシティが、かえってイイカンジだった。

エアカーは飛んでいないし、ワカモトの看板もないけれど、身近な魔都の見慣れぬ一面をのぞいてきました。

カントクはと言えば、空腹に堪えかねているようで、夜景よりも途中途中の売店やらみやげ物店が気になって仕方がないご様子。

……ヒルズに立ち食いそば屋はないってば……。

2003年7月9日(水)

オーブにてオープニングデモ曲のMIX。

途中で石川氏も現れ、初めてデモ曲を耳にしたのだが、カントクが期待した様に、ひっくりかえりはしなかった。でも、インパクトは十分あったようだ。

カントクが中途半端にネタバラシするもんだから、川井氏は気になって仕方ない様子。

モニターで見てもわからない様な仕込みをここで言われてもなぁ……。

2003年7月10日(木)

DFJの小川さん来社。

カントクがたまたま見にいった展覧会で気に入って、その場で買い込んだ美術品を届けに来てくれたとのこと。お疲れ様です。

明日の取材時に、ついでに熱海まで運んで行って欲しいということだそうだ。

カントクは大きな葛篭をもらって甚くご満悦のご様子だが、どうせ運ぶのは俺なんだろうなぁ……。

運賃はカントクのギャラから天引きにしておくことにしますか。

2003年7月11日(金)

8:00に集合して、一路伊豆高原へ。

目的地のミワドールさんと野崎オートマタ美術館さんは、以前にも取材に行っているところだが、現場での必要が生じたので再訪問することに。

今回は色指定とエフェクトのための追加取材なので、車1台で小ぢんまりと行ってくるつもりでいたら、気がつくと13人、車3台の大部隊になっていた。

戦争の合間に遠足に行く気分なり。

途中から便乗した奥さんの手前か、借りて来た猫(犬?)状態のカントク。

いつものような怒涛の薀蓄攻撃が無いばかりか、奥さんの一言一言に肩をすくめているばかり。

ふだん、俺が一言意見しようものなら、即10倍になって返ってくるのに……。

……これは……使えるかも……。

いや、収穫の多い取材ではありました。

イノセンス 野崎オートマタ美術館
(野崎オートマタ美術館)

2003年7月14日(月)

スタジオジブリより刊行予定の美術本のため、インタビュー収録。

その前後に各種チェック作業。

月曜日はただでさえ忙しいのに、今日は夕方から別件で外出の予定が入っているとのことだが、だからと言って早めに出てくるなんてこともない。

ならばその前にと、あれこれ業務を詰め込んだので、終日慌しく時間に追いまくられることに。

普段怠惰な生活に慣れきっているから、こんなときはすぐに鳴きが入る。

「ヒ~ン」とか「モォー」とか「ブー」とか……動物園みたい……。

ひととおり予定の業務が終わるや否や、隠し持っていたアンパンをパクつきながら、逃げるようにバタバタと外出。

生活習慣病が怖くて、菓子パン絶ちをしていたんじゃなかったんだっけ?

2003年7月15日(火)

原稿を書く時間がない。

すでに期日を過ぎたものや、まさに今日締め切りの原稿等が計4本。

窓口になっている俺のところでも相当数の依頼を断っているのに、いつの間にそんなに引き受けちゃったんだろう?

この期に及んで、時間がないだの、そんなにできるわけないだのとブツブツ言われても……自業自得でしょう。

やっと時間を作って机に向かったのが16:00過ぎ。

と思ったら、18:00頃には2本の原稿が上がっていた。

は、早い!……どうやったらそんなに早く書けるんですか?

ちょっと尊敬し直し……あ、誤字めっけ。

2003年7月16日(水)

今日も各種チェック作業の合間に原稿書き。

すでにどちらが本業やら怪しくなってきている感がなくもないが、どうやらカントクには、いづれは熱海の山奥で小説だけを書いて暮らしたい、という願望があるようだ。

どんなに忙しくとも、連載やら原稿依頼を断らないのは、そのための布石なのだろうか?

老後は緩やかな日々を犬と戯れながら、物書きとして余生を過ごす。

う~ん……スバラシイ……。

仕事も生活も、すべては妄想の延長に?

2003年7月17日(木)

17:00過ぎ、ゆっくりと出社。

ここまで遅いと重役出勤というよりも、会社に帰ってきている気になりませんか?

まぁ、今日はその分遅くまで作業があるので、良しとしましょう。

19:00、CGIチェックのためにモーターライズへ。

毎回毎回出かける前に、遠いだの大変だの腹が減っただのと、無意味にゴネるのは、やめてもらえませんか?

2003年7月18日(金)

メカ設定の竹内氏とカントクが、ナニヤラ言い争っている。

この方がカッコイイとか、悪いとか。

デザイン上のイメージのすり合わせには毎度苦労するが、双方に主義や主張がある場合には、泥沼化しがちである。

こんなときは、「どっちでもいいじゃん」などとは、思っても言わない。

両方の鉾先が、一斉にこちらに向けられること必至だから。

2003年7月22日(火)

CGIシーンのチェックを少々。

DFJの小川さん来社。「イノセンス」がらみの某イベントのため、打ち合わせ。

あまり時間がないにもかかわらず、思っていたよりも大規模なものになりそうだが、大丈夫なのだろうか?

あわただしくコンポジットのチェック。

その後、BV社のK氏来社。

カントクの過去作品の、DVDパッケージ化のための打ち合わせ。

あぁ、そう言えばアレだけは、いまだDVDで発売されていなかったっけ。なるべく安い値段で出して欲しいなぁと……無理だろうなぁ……。

2003年7月23日(水)

各種チェックの合間に原稿書き。

カントクの机の上に常備されているもののひとつに、オールレーズンという菓子がある。

今日も原稿書きの合間に、こいつをボリボリと食べている。

好きだねホントに。

原稿を書き終わるが早いか、帰宅の準備。

「もう帰るんですか?」と聞くと、「昼も食わずに仕事してんだから、早く帰るの!」だって……。

昼飯を食っていないという事実に、一体どんな意味が?

2003年7月24日(木)

作画参考用にカントクに持ってきてもらった「Avalon」のビデオテープ。

「ワン公の作画参考……」と言いかけたら、カントクから瞬時に、「ワン公って言わない!」とツッコミが。

みんな気をつけろ。

カントクの前で「ハチ公前で待ち合わせ」とか言おうものなら、きっとものすごい剣幕で噛み付かれるぞ。

2003年7月25日(金)

聞くとはなしに小耳に挟んだ話だが、月曜日から金曜日まで、遠く熱海から単身赴任状態のカントクは、毎晩必ず、自宅に電話をしているそうな。

(ここで一瞬、「意外と愛妻家?」と思った)

一日でも連絡を怠ると、翌日電話をしたとき、「あ~ら、御無沙汰ね」と言われるそうな。

(ここで“愛”という文字に、“恐”という文字がオーバーラップして見えたような気がした)

今日もカントクは、熱海への家路を手ブラで帰ることはないのだろう。

2003年7月28日(月)

某国より入電。

ナントカいう海外でのイベントに参加して欲しいとのこと。

最近ホントにこの手のお誘いが多いのだが、今の時期にカントクを海外に連れ出したりしたら、作品にとって致命傷になりかねないので、基本的にお断りせざるを得ないでしょう。

そういえば、海外で販売予定のDVD用にと、オーディオコメンタリーを収録したいとのお話も、保留にしたままだったっけ。

ビデオの「パトレイバー」のときにはまだ余裕があったので、調子に乗って予定外の話数までとったりしたが、次は「ビューティフル・ドリーマー」とのことなので、スケジュール組みが心配だなぁ……。

2003年7月29日(火)

美術ボードチェック、CGIチェックなどを経て、夕方モーターライズへ。

すでにポリゴン・ピクチュアズ担当分の作業は終了しているので、外注先までカントクが出向いていくのは、このモーターライズ担当シーンのみとなっている。

これが終わると、いよいよ音響作業へと突入していくことに……。

いや、も少し先かな……。

2003年7月30日(水)

各種チェック作業の合間に、原稿の校正など。

19:15過ぎに、そそくさと退社。

19:30の約束で、他社にて打ち合わせがあるそうな。

間に合うわけないじゃん! てか、聞いてねえよ、そんな話!

おそらくは、西の方で行われる予定の某イベントのための打ち合わせだと思われるが、何度言っても勝手に入れた予定を教えてくれないんだからマッタク……。

やっぱり、カントク好みのオバちゃんにスケジュール管理をさせる以外、うまくつないでおく術はないんじゃないのか?

2003年7月31日(木)

14:00から打ち合わせ。合間に美術チェック。

終了後、CGIチェック。その後、レイアウトチェック。

さらに竹内氏担当シーンのチェック。も一度CGIのチェック。

おぉ! 珍しくフルに監督らしい仕事の詰まった一日ではないですか。

やっぱり今の時期、カントク自らこのくらい働かないと、シメシがつかない……。

おや? もうお帰りですか?