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8回目となる今回は、前回の常木氏とともに『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(以下、『攻殻 S.A.C.』)シリーズを通してメカニカルデザインを担当している寺岡賢司氏に、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』(以下、『S.S.S.』)の仕事を終えての感想について伺った。
第8回 メカニカルデザイン 寺岡賢司氏
PROFILE
- 名前
- てらおか けんじ
- 経歴
- 1962年3月28日 島根県出身
主な作品 AIC にてTV『バトルアスリーテス大運動会』『デュアル~ぱられルンルン物語~』『ガン×ソード』ビィートレインにてTV『ノワール』プロダクション I.Gにて『攻殻 S.A.C.』 『攻殻 2nd GIG』『BLOOD+』等に参加。『攻殻 S.A.C.』シリーズは欠かせない、メカニカルデザインの一人。
——『S.S.S.』の話が来たときはどんな印象を持たれましたか?
テレビからずーっと引き続きだったのですが、やっぱ大変なことになったなぁというのが正直なところですね。当然もうテレビは終わって、やっと終わったー疲れきったーという状況で、また再スタートをかけなきゃいけないっていう状況ではあったんで。
楽しみではありましたよ。たぶん大変なことになるんだろうなーっていう意識はありましたね。しかも当初はなかなかフォーマットが決まらなくて、テレビになるのかビデオなのかわからないっていう状況でスタートした部分があったので、どの程度作り込むんだろうというのが僕らには見えてなかった。まぁでも作り込むといっても普段と同じことだろうなとは思ってたんです。作画のほうは大変だろうなと思いました。——今回の『S.S.S.』で一番設定するので難しかった部分というのはありますか?
今回は介護ベッドですね。
まずキャラクターに応じて描き分けなきゃいけないっていうのと、介護ベッドの枕元にある四角い機械が全体の…今回の老人介護の話を軽く比喩してるっていうか、象徴になる部分ではあったので、そのデザインをどうしようかな?っていうのは最初にありましたね。そこが決まりさえすれば後は全体的なバランスになってくるので、多少は進みは良くなるってことはあります。やっぱりベッドが、特にカルマのベッドが一番大変でしたね。金持ちでもあるし、カルマの美術を見るとわかるのですが非常に豪邸に住んでいて、カルマ自身も結構なセンスを持ってる人間、感覚的なものがある人で、でも老人介護という部分で寝たきりになっている。それでこの人はどんなベッドで寝てるんだろうっていう部分を想像しながら客体に合わせてベッドをつくっていくんですよね。病院のベッドとかだとそれはやっぱりカスタマイズ品じゃなくて、病院がつくったものなので、わりと細工のないものでいけるんですけど、カルマという性格を考えながらデザインしなきゃいけないんでそれがちょっと難しい部分でしたね。
実はあの『攻殻 2nd GIG』でも、何台かベッドは描いてますので割りと多いんですよ。
警察ものの関係で登場人物がみなさん怪我するんですよ。病院のベッドで寝てるってシーンは割りとあったので、たぶん僕がやった作品の中で一番たくさん医療関係を設定したかなっていう感じではありますよね。
——特に印象的だったデザインはありますか?
カルマのベッド、あとはパワースーツかな。
Dパートで出てくるサイボーグが…あ、あれパワースーツじゃないのか。サイボーグなのか。サイボーグが着る、サイボーグが着るっていうと変な言い方なんですけど、サイボーグスーツなんですけど、あれ今回パワードスーツに見えるけど、実はサイボーグなんだよっていう特殊な設定になってるんです。
結構ヘンテコなラインで描いて、珍しく鳥足だったのです。鳥足って逆関節なんですけど、鳥足ってのは普通アニメーションの場合はアニメーターが嫌うんですよ。普通の足はぐいと変わってぎくしゃくした動きになるので、それをあえて取り入れてやったっていう部分があります。
今回はほんとにデザインの注文は、難しい注文が多かったですね。デザインが難しいというのではなくて、アニメーションにしたときに大丈夫かな?っていう部分がたくさんありましたよね。このパワードスーツもそうですし、深海作業ロボが六本足。普通は六本足って難しいんであまりやらないっつうかほとんどやらないんですよ。四本が限界なんです。それをあえて六本足に挑戦したって、まぁ3Dの積み重ねがあったんで、大丈夫だろうって計算が神山さんの方にあったと思うんです。それは僕の方もたぶん3Dで二年、三年やってくださってるんで、大丈夫かなっていうのはあったんですよ。でもやっぱり描くときはちょっと冒険ですね。他作品ではこれは出来ないですよ。
——これから見る方に向けて、こういうところを作り手として見て欲しいという所はありますか?
今言った深海作業ロボの動きとか、わらわら出てくる3Dのサイボーグの大変な動きとか注目して見ていただけると面白いです。こんなところも動いてるよっていうのありますので、二度、三度見ていただければと思います。ぜひDVDを買って見てください。
一回見ただけではたぶんわかんないと思いますんで。そういう風につくってあります。
細かいディティールとか動かすディティールもそうですし、画面の密度も高いので、一回だけ見るよりは、一回見ていただいてから、二、三回ざっと見る方がわかりやすいかな。まぁそういう面白いものなので、何度も見れると思います。ご期待ください。