- 各話紹介
- 第1話「公安9課 SECTION-9」
- 第2話「暴走の証明 TESTATION」
- 第3話「ささやかな反乱 ANDROID AND I」
- 第4話「視覚素子は笑う INTERCEPTER」
- 第5話「マネキドリは謡う DECOY」
- 第6話「模倣者は踊る MEME」
- 第7話「偶像崇拝 IDOLATER」
- 第8話「恵まれし者たち MISSING HEARTS」
- 第9話「ネットの闇に棲む男 CHAT! CHAT! CHAT!」
- 第10話「密林航路にうってつけの日 JUNGLE CRUISE」
- 第11話「亜成虫の森で PORTRAITZ」
- 第12話「タチコマの家出 映画監督の夢 ESCAPE FROM」
- 第13話「≠テロリスト NOT EQUAL」
- 第14話「全自動資本主義 ¥€$」
- 第15話「機械たちの時間 MACHINES DESIRANTES」
- 第16話「心の隙間 Ag2O」
- 第17話「未完成ラブロマンスの真相 ANGELS' SHARE」
- 第18話「暗殺の二重奏 LOST HERITAGE」
- 第19話「偽装網に抱かれて CAPTIVATED」
- 第20話「消された薬 RE-VIEW」
- 第21話「置き去りの軌跡 ERASER」
- 第22話「疑獄 SCANDAL」
- 第23話「善悪の彼岸 EQUINOX」
- 第24話「孤城落日 ANNIHILATION」
- 第25話「硝煙弾雨 BARRAGE」
- 第26話「公安9課、再び STAND ALONE COMPLEX」
「電脳 Cyberbrains」
20世紀末、ポータブル型からウェアラブル型への移行という形で、モバイルメディア端末の展開した人間身体への漸近運動は、新世紀に突入してから、肉体に端末自体を物理的に移植するインプランタブル型が登場することにより、一応の終局を迎えることとなった。後に幅広く「電脳」と通称されることになる技術の先駆けである。
マイクロマシンの導入による技術革新を通じて安全性への信頼と低価格化が実現してからは、電脳は、日本をはじめ宗教規制の働かない国において爆発的な普及を見せることになる。人間の脳とネットワークとの直接的なインタラクションの可能性が、人間と機械がもはや完全に分離された状態には甘んじられない、新たな時代への幕開けをもたらしたことは言うまでもない。
しかし電脳の広範なる浸透は、新たな社会不安も醸成した。ネットワークへの常時接続は、個人の電脳を他者のハッキングの脅威に晒すことをも同時に意味していたからである。電脳ハッキングの中でも最も深刻なのは、ゴーストハックと称される、記憶すら書き換えられ、時には人格そのものを他者にのっとられる、ハッキング行為であった。そうした犯罪行為に対抗すべく、多種多様な防壁の開発、規制強化、ネットワーク内の管理体制の見直しなど、入念な対策が図られたものの電脳犯罪を撲滅するに至らず、電脳犯罪に特化した警察機構の設立を希求する気運が高まった。