「電脳 Cyberbrains」

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 用語集

20世紀末、ポータブル型からウェアラブル型への移行という形で、モバイルメディア端末の展開した人間身体への漸近運動は、新世紀に突入してから、肉体に端末自体を物理的に移植するインプランタブル型が登場することにより、一応の終局を迎えることとなった。後に幅広く「電脳」と通称されることになる技術の先駆けである。

マイクロマシンの導入による技術革新を通じて安全性への信頼と低価格化が実現してからは、電脳は、日本をはじめ宗教規制の働かない国において爆発的な普及を見せることになる。人間の脳とネットワークとの直接的なインタラクションの可能性が、人間と機械がもはや完全に分離された状態には甘んじられない、新たな時代への幕開けをもたらしたことは言うまでもない。

しかし電脳の広範なる浸透は、新たな社会不安も醸成した。ネットワークへの常時接続は、個人の電脳を他者のハッキングの脅威に晒すことをも同時に意味していたからである。電脳ハッキングの中でも最も深刻なのは、ゴーストハックと称される、記憶すら書き換えられ、時には人格そのものを他者にのっとられる、ハッキング行為であった。そうした犯罪行為に対抗すべく、多種多様な防壁の開発、規制強化、ネットワーク内の管理体制の見直しなど、入念な対策が図られたものの電脳犯罪を撲滅するに至らず、電脳犯罪に特化した警察機構の設立を希求する気運が高まった。