- 各話紹介
- 第1話「公安9課 SECTION-9」
- 第2話「暴走の証明 TESTATION」
- 第3話「ささやかな反乱 ANDROID AND I」
- 第4話「視覚素子は笑う INTERCEPTER」
- 第5話「マネキドリは謡う DECOY」
- 第6話「模倣者は踊る MEME」
- 第7話「偶像崇拝 IDOLATER」
- 第8話「恵まれし者たち MISSING HEARTS」
- 第9話「ネットの闇に棲む男 CHAT! CHAT! CHAT!」
- 第10話「密林航路にうってつけの日 JUNGLE CRUISE」
- 第11話「亜成虫の森で PORTRAITZ」
- 第12話「タチコマの家出 映画監督の夢 ESCAPE FROM」
- 第13話「≠テロリスト NOT EQUAL」
- 第14話「全自動資本主義 ¥€$」
- 第15話「機械たちの時間 MACHINES DESIRANTES」
- 第16話「心の隙間 Ag2O」
- 第17話「未完成ラブロマンスの真相 ANGELS' SHARE」
- 第18話「暗殺の二重奏 LOST HERITAGE」
- 第19話「偽装網に抱かれて CAPTIVATED」
- 第20話「消された薬 RE-VIEW」
- 第21話「置き去りの軌跡 ERASER」
- 第22話「疑獄 SCANDAL」
- 第23話「善悪の彼岸 EQUINOX」
- 第24話「孤城落日 ANNIHILATION」
- 第25話「硝煙弾雨 BARRAGE」
- 第26話「公安9課、再び STAND ALONE COMPLEX」
「熱光学迷彩 Thermo-Optical Camouflage」
その技術の科学的詳細の解説についてはまたの機会に譲らざるをえないとしても、熱光学迷彩技術の実現がもたらした影響については、科学以外の分野においても顕著であったことは強調しておいてよいだろう。
迷彩の使用を許可されていたのは、基本的には公安の一部、そして軍の情報部およびレンジャー部隊の一部であった。むろんながら、その使用にはきわめて多くの制限が設けられていながら、己の姿をある一定時間は周囲の風景に溶け込ませ、存在を完璧なまでに消すことができるという紛れもない事実は、市民の日常生活において、目に見えない国家権力の監視の視線の存在を絶えず喚起させたであろうことは想像に難くない。
フーコーの言説に従い、ほかならぬ権力発動の場の透明化こそが、権力構造そのものを強化する結果を招くと仮定するならば、警察や軍を始めとする国家機構の果たすパノプティコン的機能は、いまやあらゆる隠喩を通り越して、ほぼ純化された形で観察されるようになったのである。
一方で、情報圧縮によるデータの保存技術の発達は、時間をさかのぼっての捜査および監視をも可能にしたために、権力発動の構造は空間的なものに加えて時間的にも複雑化、多様化していったのである。