作品紹介シュヴァリエ

第3回 脚本家 菅正太郎の言葉ありき!「旅」

iiduka.JPG
名前
菅正太郎(すが・しょうたろう)
役職
脚本家
代表作
1972年生まれ。『夜逃げ屋本舗』で脚本家デビュー。
『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズ
テレビ『BLOOD+』
テレビ『交響詩篇エウレカセブン』
劇場『CASSHERN』
etc

「曖昧な部分を出来るだけなくして、徹底的に話し合いながら、みんなで世界観を描いていった感じがします。さながら旅でした」

——『シュヴァリエ』への参加のきっかけは?

 最初はプロデューサーの中武さんからお話をいただき、冲方さんと古橋さんが関わると聞き、お話を受けました。ちょうど『交響詩篇エウレカセブン』が佳境にさしかかった時期でもあり、作品の概要をうかがった時点で、片手間ではできないなと判断し、途中参加させていただく形になりました。

——脚本を執筆していくなかで、『シュヴァリエ』ならではの苦労はありましたか?

 古橋さんというベテランの監督さんとやることの緊張感は最初からありました。『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズや『BLOOD+』『交響詩篇エウレカセブン』『CASSHERN』など、僕は初監督の方と組むことが多かった。徹底的に話し合える場の中で、アイデアを出し合い、内容を吟味し合うという、ある意味、共同作業で脚本を書くことが多かったんです。それが一番慣れていたし、やり易かった。でも裏を返せば、自分個人の力量で補えない部分を、全体の力で補っていただいていた部分が多分にあったので、果たして自分に書けるのだろうかと、最初はかなり臆していました。ですが結果的に、『シュヴァリエ』の本読みは、これまで以上とも言えるくらい、全員で徹底的に話し合う場でした。

内容に関しては、毎回、冲方さん・監督にアイデアを頂き、2人のやりたいことの熱い部分をできるだけ凝縮して見せることを心がけました。シリーズが進んでキャラクターが育っていくと、本筋が見えてきて色々なものが削がれていくことも多いですが、今回は、決められていたメインどころに関しての情報に削ぎ落としはほとんどなかったように思います。“フランス革命前夜”という一つの国に忠誠を尽くした人と、そうでない人々が織りなす群像劇的なカタルシスは、最初に頂いたプロットから損なわれることなく、むしろより濃い形で作品に反映できたと感じています。

——本打ちでのやりとりで印象に残っていることはありますか?

 やりたいことを一貫して貫かれる古橋監督に対し、何千・何百というパターンでシュミレーションを重ねられた冲方さんがその場で、どんどん新しいアイデアをもって答えを返していく。そこに加えて、むとうさんをはじめ脚本チームのそれぞれが培ってきた高い演出力、技術力、物語の構築力が凝縮された脚本に仕上がっていると思います。

 他の作品に較べて、『シュヴァリエ』の脚本の特色としては、まず枚数が多いですね。多いときではペラ換算で100枚くらい。いつもコンテにするのは大変だろうなと思いつつ、仕上がってきたものを毎回読ませて貰うにつけ、高い技術力、演出力に驚かされています。これを更に映像にし、演出していくのはとても大変な作業です。いちスタッフというよりは、半ば観客として、監督をはじめ、現場のスタッフの方々の今後の作業に期待しています。

——『シュヴァリエ』の脚本作業はほぼ終わったと伺っていますが……作業を終えて思うことはありますか?

 ボクにとって、『シュヴァリエ』の脚本作業は、キャラクターとの旅のようでした。シリーズものをやると、いつも感じることではあるのですが、この作品では特に強く、それを感じました。ある程度史実に則っているからということもあるのでしょうが、曖昧な部分を出来るだけなくして、徹底的に話し合いをしながら、みんなで世界観を描いていくという作業を重ねたからだろうと思っています。視聴者のみなさんにもぜひ同様の経験をしていただけると幸いです。