作品紹介シュヴァリエ

第4回 大島ミチルさん インタビュー「久しぶりにクラシックらしい、クラシックが書けた作品です」

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名前
大島ミチル(オオシマ・ミチル)
役職
作曲家
経歴
長崎県長崎市生まれ。国立音楽大学作曲科卒業。在学中から作、編曲家としての活動を始め、映画音楽、CM音楽、TV番組音楽、アニメーション音楽、施設音楽など様々な分野で活躍。在学中に、交響曲「御誦」を発表。毎日映画コンクール音楽賞受賞、第21回、第24回、第26回、第27回、第29回の日本アカデミー優秀音楽賞なども受賞。
他にも2006年アニメーション・オブ・ザ・イヤー音楽賞受賞、2005年マックスファクタービューティー スピリット賞受賞。
「Michiru Oshima Cinema Music Best」CDを発売中。またヨーロッパと日本にて「For The East」CDも発売中。
代表作(映画)
  • 明日の記憶
  • 間宮兄弟
  • 北の零年
  • 海猫
  • 長崎ぶらぶら節
  • 失楽園
  • ゴジラ対モスラ対メカゴジラ
  • 模倣犯
  • 阿修羅のごとく
  • 陽はまた昇る
  • 他多数
代表作(番組音楽)
  • NHK朝の連続テレビ小説「純情きらり』「あすか」
  • NHKスペシャル「「生命-40億年の旅」
  • 「ショムニ」「ごくせん」アニメ「鋼の錬金術師」
    他多数

「『シュヴァリエ』の作曲のお仕事を頂いたとき、『シュヴァリエ』と聞いてすぐ誰のお話であるのか分かりました。私はフランスによく行くのですが、“デオン”について取り扱った書籍は数多く出版されていて、『シュヴァリエ』といえば“デオン”のことだと、みんなすぐ分かるくらいです」

そう話してくれたのは、大島ミチルさん。テレビドラマ『純情きらり』『CAとお呼び!』『レガッタ』、映画『間宮兄弟』『明日の記憶』など数多くの話題作の映像音楽(劇伴)を手がける日本を代表する作曲家だ。

 大島さんの仕事は、作曲から実際に曲をスタジオで録音し、仕上げるまで。時には、演奏者のレベルが均一になるようスケジュール調整をしたりもする。
「『シュヴァリエ』の曲を録音した際には、譜面を見るのは初めての人もいましたが、演奏では一度も間違えることなく、ほとんどが一発録り。すごく集中力を感じました」

『シュヴァリエ』の録音時のエピソードをそう振り返りながら、続けて第1話「デオン∴リア」を見た感想を語ってくれた。
「“鏡の間”や“宮殿のお庭”のシーンをひと目見たとき、これは“ヴェルサイユ宮殿だ”とすぐ分かりました。そこまでキチンと作り込んであるんですよね。今の時代のアニメーションは想像の世界を舞台にしたものが多いのですが、『シュヴァリエ』には実際の歴史を取り扱っているという説得力を感じました。子ども向けアニメとはまた違う、大人がきちんと見られる作品です。滑らかな絵で、色も綺麗で、細部まですごくよくできていますし……さぞやアニメ制作の現場はご苦労が多いと思いますね。でも劇場作品にしてほしいです(笑)」

アニメの音楽の可能性とその良さを引き出す曲作り

 数多くの映像音楽を手がけている大島さんだからこそ、アニメの音楽に思うことも多い。

「アニメーションでは、時に現実にないものを表現できます。時代設定から、国の設定まで。『シュヴァリエ』ではヴェルサイユ宮殿が登場しますが、現実のヴェルサイユ宮殿で撮影をするのは難しく、なかなかできるものではありません。でも、アニメーションなら表現できる。イマジネーションとしての可能性を感じます。

 実写では人間が実際に動いているからお茶を飲んでいても、ちょっとした目の動きで感情を見ている人に伝えることができます。でも、アニメーションでは、どんなに絵が素晴らしくても、ただお茶を飲んでいるだけでは、そのシーンでどんな感情の動きがあるのかを伝え辛い。だからこそアニメーションの音楽では、ドラマを盛り上げるためだけではなく、画面に出しづらい感情表現を少しオーバーにして補足しています」

 最後に『シュヴァリエ』の作曲作業を行っていくうえで、特に留意したことについてうかがった。

「『シュヴァリエ』の作曲では、特にヨーロッパのクラシック的な重さを出そうと意識していました。また、コーラスや短いメロディーには、同じフレーズを繰り返し使用しています。曲の中に人の声が入ってくることで、訴えかける力や説得力が増して、魔術や儀式のイメージになると思ったからです。

 普通、会話は音楽と重なると聞き取り難くなるのですが、弦楽器の音を使ったオーケストラの場合は、人の声との分離がよく、セリフに被らず迫力が出せるんですね。『シュヴァリエ』に登場するキャラクターには、軽い感じのキャラクターがいないので、荘厳なオーケストラを使っても全然違和感がないと思います。久しぶりにクラシックらしいクラシックを書けて、とても楽しかったですね。作曲作業をするときは作品との相性もあるのですが、『シュヴァリエ』は曲を書いているときもしっくりきました」

 「作曲作業が終わっても、忙しくて完成した作品を見続けることは難しい場合もあるのですが、『シュヴァリエ』は続きを楽しみに見ていきたいと思っています」と話してくれた大島さん。『シュヴァリエ』という作品から感じるのは「人の生き方」だという。どの時代に生きても、その時代なりの辛さや厳しさがある。が、そんななかで人間がどんな生き方をしていくのか、そこを見てほしい、とのことだ。