作品紹介シュヴァリエ
- 制作日誌
- 2006年7月7日 羊頭狗肉
- 2006年7月14日 設定制作
- 2006年7月21日 デオン
- 2006年7月28日 情報共有
- 2006年8月18日 第1話放映開始
- 2006年8月25日 モデル
- 2006年9月1日 デュラン
- 2006年9月8日 モデルその2
- 2006年9月15日 やおい
- 2006年9月22日 取材
- 2006年9月29日 外国語
- 2006年10月6日 誕生日
- 2006年10月20日 花
- 2006年10月27日 自動車02
- 2006年11月2日 映画
- 2006年11月17日 外国語その2
- 2006年11月24日 ワイン
- 2006年12月7日 ロバート・ウッドのカツラ
- 2006年12月15日 薄い
- 2006年12月22日 忘年会
- 2007年1月5日 年末
- 2007年1月12日 続・映画
- 2007年1月26日 一問一答
- 2007年2月2日 知識
- 2007年2月9日 松元さんと…
- 2007年2月19日 スーツ
- 2007年2月23日 最終回
- 2007年3月2日 おわり
- 特集
- 「デオン・ド・ボーモン ビスクドール」について
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- 24人のシュヴァリエ 第2回
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- 24人のシュヴァリエ 第4回
- 24人のシュヴァリエ 第5回 前編
- 24人のシュヴァリエ 第5回 後編
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第21回 演出・絵コンテ 塩谷直義の言葉ありき! 「パイオニア」
- 名前
- 塩谷直義(しおたに・なおよし)
- 経歴
- 1977年生まれ。
主な参加作品はTV『風人物語』(作画監督)、『BLOOD+』(作画監督・3rd OP演出・作画監督)、『お伽草子』(原画)、GAME『パワフルプロ野球12』(OP、ED作画監督)、劇場映画『劇場版 ツバサ・クロニクル 鳥カゴの国の姫君』(原画)、『鉄コン筋クリート』(原画)など。本作で初めてTVシリーズ作品の演出を手がける。
——『シュヴァリエ』に参加したきっかけを教えてください?
プロデューサーの中武さんには、以前からお世話になっていまして、新しいTVシリーズ『シュヴァリエ』が始まると聞いて、どんな作品になるのか楽しみにしていました。そして、実際に完成した絵を見て、「これは、なんて大変なことをやっているんだ!」と思いましたね。その時点では、まさか自分がこの作品に参加するとは思っていなかったんですけど(笑)
それからしばらく経ったころ、中武プロデューサーが興奮した様子で僕のところにやってきて、「いや~、この脚本が凄いんですよ!」と、『シュヴァリエ』第18話シナリオの面白さを滔々と語り始めたんですよ。それから、これまでのシナリオなども改めて読ませてもらうと、これが本当に面白くて。ひさしぶりに「続きが気になる」作品だと思いました。
30分のTVシリーズ作品の1話分を絵コンテから演出まで通して担当するのは、今まで自分ではやったことがなかったので、出来るならやってみたいと思い、参加することにしました。きちんとした脚本がある作品を、自分がどのようにより良く、面白く、映像に出来るのかという作業にチャレンジしたいと思ったんです。
——『シュヴァリエ』は、初のTVシリーズ作品での演出とのことですが、これまでの仕事と比較しての感想をお聞かせください
明確な違いというものはないと思うんですが、自分で絵コンテを描くということは、仕上がりの映像が頭に浮かんでいるわけなので、その作業工程はともかく、画面や音というものも含めて「やれる!」とイメージがあれば、きっと自分にも出来るんじゃないかと思いました。オープニング映像やショートムービーは、それ単体で完結してしまうもので、前後のつながりとは関連性がありません。でも、今回のようなシリーズものであれば、ストーリー全体の流れのことも考えなくてはいけない。音楽にたとえるなら、一番盛り上がるサビの部分だけでなく、そこに向かうために緩急のあるリズムを作ったりということもうまく出来ればいいなと思っていました。
僕が担当した第18話は、冒頭でのチャールズとの戦いから始まって、ヴェルサイユでの政治的なやりとりも見せ、カリオストロたちの暗躍に、メドメナムでのダッシュウッドとデオン=リアの戦い、マクシミリアンとダッシュウッドの会話とその最期、マクシミリアンの復活などなど、現実世界だけでなく異空間の表現もあったりと、シナリオに書かれているすべての要素が本当に収まるのだろうかと最初は心配したんですが、やってみるとなんとかなるものですね(笑)
もっとも、描きあがった絵コンテを見ると、他の人が描かれたものと比べるとかなり厚みがあって(笑) それでも、そうしないと自分のイメージがふくらまなかったと思います。そういった構成の部分では、TVシリーズの20分という尺は、決して長いわけではないということが、よく分かりました。そして、タイトなスケジュールの中で、どのように各パートの作業を配分していくかということを考えていかないと、最終的なクオリティがあがらないので、絵コンテを描く段階でそこまでのことを考えてのコントロールが必要です。とにかくリテイク作業を減らせるように、良い映像をつくりながらも、各スタッフの負担を減らすように気をつけました。
——スタッフとの打ち合わせはどのように進められましたか?
古橋監督からは、絵コンテの打ち合わせの時に、「ダッシュウッドの最期を描くお話なので、彼がただの悪人ではなく、ちゃんと視聴者が感情移入できるキャラクターにしてほしい」という説明を受けただけで、あとはお話の頭から最後まで、本当に自由にやらせていただきました。
脚本の菅正太郎さんとは、直接お会いしての打ち合わせはしていないのですが、仕上がった絵コンテを見てくれて「自分のイメージどおりの絵です。フィルムの仕上がりを楽しみにしてます」と言っていただけたので安心しました。そして、作画監督の浅野恭司さんをはじめ、作画の方たちには大変助けていただきました。自分はもともとアイジー第2スタジオに所属していて、黄瀬(和哉)さんにお世話になっていたんですが、今回、演出担当として黄瀬さんに作画のお願いをしにいった時など、非常に緊張しました(笑) でも、頑張ったかいあって、著名な原画マンの方にも参加いただけることになって、作画的にも凄く良いものになったと思います。実は、この第18話の演出を担当している間は、中武プロデューサーの勧めもあって、作画監督の浅野さんと隣同士の机で作業をしていました。こまごまとした相談ことがその場で決められるということもあって、スムーズに作業を進めることが出来ました。基本的に、レイアウトは自分のほうで進めて、動きに関しては浅野さんにお任せするという分業スタイルでしたね。
それから、自分で一番びっくりしたのは音響の部分です。実は今回のお話では音楽の入っているシーンがほとんどないんですよ。自分でもお話が終わったときに、エンディングの曲を際立たせたいと思っていたので、非常に上手くいったんじゃないかと思います。仕上がったフィルムを見てエンディングの曲が流れた時に、自分でもグッっとくるものがありましたから。
——今回、塩谷さんが表現したかったテーマはなんですか?
今回、自分が気をつけたのは、それ以降のストーリーについての情報を聞かないようにしたことです。先の展開を知った状態で絵コンテを描くと、その未来の情報が先入観となって実際の画面に反映されてしまうので、この第18話の時点での登場キャラクターたちの心情を表現できるようにしたかったんです。あとは、四銃士のそれぞれが自分の持っている資質を十分に生かして活躍できる場を作ってあげたいと思っていました。
そして異空間の瓦礫の山の表現は、「フランス革命」を暗示するものにしようと考えました。もちろん、実際のフランス革命はあんなことにはなっていないけれど、ダッシュウッドが見たイメージというのが、その当時のフランスの姿なのか、もっと未来の姿なのか、視聴者には固定観念を与えたくなかった。自由とか人権の象徴としてフランス国旗のイメージを画面に出したりもしていますが、その異空間が何を意味するのか明確に答を出すのではなく、もしかしたらこういうことなのかな?と、考える余地を残したつもりです。見ている人には「不思議な体験をしたなぁ」と思ってもらえたらいいなと考えて作りました。
あと、今回はデュランを見せてあげたいと思っていたんです。四銃士の中では、彼が一番かわいそうな目にあっていて、片腕を失った今では、もうまともに戦うこともできない。騎士として今も剣は手放さないけれど、今まで当たり前のように出来ていたことが出来ない。これまで他のキャラクターに頼られてきたのに、それを受け止められない。そういった悔しさが画面から感じられればと思っていました。
——登場キャラクターのうち、お気に入りは誰ですか?
デュランも好きなんですけれど、一番はダッシュウッドです。今回のお話では初めから終わりまで、彼を描き続けましたからね(笑) 自分としては、彼は純粋な「悪人」ではなかったと思うんですよ。最期の対決で、自分が信念をもって実現しようとしてきたことを、マクシミリアンから、「思想的に古い」ということで否定され、新たな理想世界のイメージを見せられる。その時ダッシュウッドは、彼なりにその新たな世界に納得して、満足して死んでいければいいなと考えていました。
——この作品に関わったことで得られたものはなんですか? また、それを生かしてこれからやりたいことはなんですか?
今回の仕事で得たものは、本当に大きかったと思います。これまでのように作画だけをやっていると、担当するカットの内容を考えるというような、ワンシーンだけでの関わりだったのですが、演出の場合は全体を通して作品に関わることができる。作画から仕上げまで、すべてのセクションのペース配分を全体を通して考えることが、作品全体のクオリティを高めることにつながる。それが、自分の表現したい作品を作りあげることにつながるのだと思いました。
自分がレイアウトを担当したカットでは、カメラが切り替わってキャラクターが対峙するような緊張感のあるカットを、ダッシュウッドとリアの対決シーンだけにする、という試みをしています。通常の切りかえし的な表現が一番、印象に残るようにしたかったので、他のカットでは、できるだけそういった見せ方をしないために、アンングルを変えるなどの工夫をしています。
映画だと、市川昆監督の作品が好きだったりするので、その辺の影響を受けて画面作りを模索していたりはしますね。一つ一つのカットを見ると不安定な印象を受けるかもしれませんが、全体を通して見ると、流れの中でリズムがあって見られるようなものにしたかったんです。むしろ異空間のほうが、普通のカメラアングルに近かったかもしれません。そうしないと、不可思議なオブジェクトが際立たないからです。
これからやりたいことは、さまざまあるんですけど、今回、演出を担当したことで「シリーズものって面白いな」と思いました。シリーズ演出、そして監督の仕事にも興味がありますね。
演出とか監督の仕事って、音楽で言えばオーケストラの指揮者のような存在で、スタッフ全体のリズムをとることが大事な役割だと思うんです。そうすることで、すべてのパートが一つにまとまって作品として完成される。そういったことが、自分で作る映像でも出来るといいなあと思います。
——最後に『シュヴァリエ』視聴者へのメッセージをお願いします。
『シュヴァリエ』は、凄い作品だと思うんです。本当に面白いし、いろんな人に見て欲しい。そして、TV放映で毎週見続けてきた時の印象と、改めて初めから通して見返した時とでは、お話の見え方が違うと思いますので、いろんな視点から見直して欲しいなと思います。物語はもうすぐ終幕を迎えますが、自分も一ファンの視点で、この作品のストーリーがどのようにまとまってゆくのか、楽しみにしています。