作品紹介シュヴァリエ

第5回前編 脚本家 むとうやすゆきの言葉ありき!「国分寺」

今回は、チーフライターを担当しているむとうやすゆき氏。手がけた脚本はシリーズ24本中、約半数の11本というシュヴァリエっぷり。作品の全体像を見据えて様々な仕掛けを施し、物語と人物たちに深みを与えるその筆は、古橋監督・冲方氏と見事なトライアングルを成して作品世界を支えています。

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名前
むとうやすゆき
役職
脚本家
経歴
デビュー当時より、敬愛する古橋監督に自作を送付するなどして存在をアピール。『バジリスク~甲賀忍法帖~』での仕事が決め手となり、監督推薦の形で本作に参加。冲方丁の壮大な構想の中に生きる人物たち一人一人にさらなる機微と深い人間性を与える役割を担いつつ、最多本数の脚本を執筆。『銀河鉄道物語』では人気エピソード『闇の慟哭』のノベライズも手がけている。

——『シュヴァリエ』へ参加された当初の印象は?

 虚実混合の大河歴史もの、しかも実質オリジナル作品ということで、実は、3話あたりまでは冲方さんが書いてくださるものと思いのんびり構えていたんです。いきなり「2話から」と言われて、「ムリっす」という言葉が喉元まで出かかったのですが、四銃士が集結する話というのに魅力を感じたのと、第1話を読ませてもらってベルニスという男に惹かれ、その最期を描いてみたいという気持ちもあったので、思いきってやらせて頂きました。

 今になってみると、ここまで『シュヴァリエ』にガッツリどっぷり取り組めたのは、最初に第2話を書かせてもらえたからかな、とも思います。デュランやテラゴリーにしても、どんなふうに何を喋る奴なのかを、まだスタッフが誰も知らない中で書けたというのは、苦しいながらも非常に楽しかったですし、それがまた、キャラクターへのより深い愛着にもつながっていった気がします。

——『シュヴァリエ』を作り上げていくなかで、とくに大切にされていることは?

 キャラクターそれぞれの「想い」です。時代背景や設定も重要ですが、僕にとってはデオンをはじめとする人物たちの持つ精神性が何より魅力的で、とにかく“書きたい衝動”に駆られました。西洋の騎士物語には日本人の琴線に触れるところが多分にありますし。個人的な状況として、ある使命感をもって全力で取り組むつもりだった仕事への参加がなくなり、“人を描きたい”というエネルギーを注げる場を求めていたところでしたので、『シュヴァリエ』に呼んでいただけたことはタイミング的にも幸運だったと思います。

——『シュヴァリエ』を一緒に作っているスタッフについての印象を。

 おこがましい言い方ですが、仕掛け人の方々、クリエイターの面々、そして若い制作スタッフさんたちが、それぞれの立場で実にいい仕事をしています。みんなの気持ちが入っていることを肌で感じるというか、たとえば尾崎智美さんのキャラクターデザインを拝見しても、脇役にいたるまで、その表情ひとつやちょっとしたメモ書きなどから、ノッてやってくださっていることが伝わってきます。個々の、そしてチームとしての温度が良い感じに高まっているのではないでしょうか。

 シナリオ会議が12時間を超えることもありましたが、時間だけかけて結局徒労に終わった、ということは一度もなく、必ず相応の意義や実りがありました。

 これまで自分にとって(プロダクション I.Gのある)国分寺というのは、オヤジの墓参りに行くとき電車を乗り換えるところでしかなかったのですが、こんなにも“熱いやつら”が生息している場所であったことを知り、脱サラして良かったなと改めて思っています。